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本の感想とか

町田康「弥勒の世」文學界 2024.4

文學界4月号の創作を読みます。


雑誌なので長編は連載の形で掲載されるだろうから、


創作は書き下ろしの短編小説のことでいいのかな。




まずは、町田康の「弥勒の世」。



顔面にコンプレックスがある男がテロを起こそうという話。


主人公は顔面のせいで仕事を失ったと思うほどコンプレックスが凝り固まっています。


コンプレックスとかトラウマって理性でどうなるもんでもないから大変だよね。


感情の矛先を社会に向けて生き延びるので精いっぱい、そんな男に思えます。


そんなとき偶然見つけたアルバイトの張り紙。


銀行強盗みたいな店員(?)の竹刀をかわし無事に採用されます。


仕事内容も知らされずサワダという男と公園へ。


毒性のある「ヤバいガマ」を殺処分するのが仕事みたいです。


「ヤバいガマ」がどれだけヤバいかっていうと


・皮膚の痙攣、呼吸中枢の麻痺、けいれん窒息を引き起こす毒ガスをまき散らす
・繁殖力が強い
・ちなみに5匹いる


ヤバいですね、はい。ことがうまく進むはずがない。


予想通りガマの毒でサワダがやられます。


サワダの顔面が「うそぶき」みたいになってしまいました。


「うそぶき」 ひょっとこみたいですね。


ガマたちは逃げ出します。


主人公はこのままガマたちを放って逃げようと決心。


ガマの毒で社会なんて滅べばいい、みんな「うそぶき」顔になればいい、そう思って。


みんな平等な弥勒の世を願って。




注目すべきは主人公の心理描写ではないでしょうか。


表現の話ではなく、思考の流れです。


主人公のやってることがヤバいのは間違いないけど、


考え方を否定できる人はどれくらいいるのかな。


感情とか抜きにしてね。


主人公の言ってること論理的にはわかっちゃう気がしませんか。


特に平等とか言われると反論しずらい。


なんか共産主義っぽいですよね。


大切なことは、頭の中で理屈を完結させないことだと思います。


実生活に反映させてみるとおかしいことに気づくはず。


作品中でも主人公が実際に行動に起こしたから、ヤバさに気づけたんじゃないでしょうか。


ちなみに私は平等より公平のほうが良いと思っています。




理屈と鳥もちはどこにでもくっつくので気を付けたいですよね。